2018/06/23

「カッコいい!」というどうしようもなく高い価値

こんにちは、デザイナーの甲斐陽信です。

もう10年以上前でしょうか、「人は見た目が9割」という厳しい現実を突きつけられるような本が話題になりましたが、私はその現実をなかなか受け入れられずにいました。

いや、今も受け入れられていないのかもしれません。

デザイナーである以上、見た目の価値は充分に理解しているつもりでした。でもそれはまだ甘い認識であり、ひとりよがりな価値観だったと思わされます。

「見た目よりも中身!」という価値観に、デザイナーは縛られ過ぎてはいけないようです。

先日担当した仕事で、こんなことがありました。
それは…

 

 

離脱率が「アイキャッチ」で一番起こるという敗北

とある製品のアイキャッチを制作したのですが、いざリリースしてみると「LPの中で、そのアイキャッチの部分が一番離脱率が高い」という、デザイナーとしては大敗北の事件があったのです。

その事件を受けて、KUSUNOSE&CO.の社長・宮川さんより「こういった製品のビジュアライズを研究してみてください」という指令が下り、参考にダイレクトさんのヘッダー画像を複数いただきました。

ちなみにこちらが「敗北」を喫した、メインビジュアル。

タイトルに即して「コピー・ペースト」だけを配置したキーボード。
「2つのボタンを押しただけで完結する」と直感的に思ってもらうためのモチーフ。
無駄を排したシンプルな見た目。

「でもきっと、これじゃ伝わらなかったんだなぁ」と思いながら、数十個に及ぶダイレクトさんの参考サンプルを見ているうちに、私は衝撃を受けます。

 

 

「全部…【ただカッコいいだけ】やんけ!」

【意味の無いものを削ぎ落としてこそ、洗練された機能美が備わる】

という価値観でここ数年デザインしてきた私にとって、
それは「なにそれズルい」とハンカチを噛みしめるような想いが溢れる出来事でした。

でも考えてみれば「ただカッコいいだけ」のものにだって大きな価値があります。
というかそれは、むしろ大きなアドバンテージでしょう。

「欲しい!」と思ってもらうためには、どうしようもなくビジュアルも大切なようです。
そしてメインビジュアルとは、まさにそういうものが求められる場所。

数年前はそれを追い求めてデザインしていたハズなのに、いつの間にか偉くなったようなつもりで
「意味と機能を追求したデザインじゃなきゃ駄目」という価値観で自分を縛っていたのでした。

 

 

王道を前にして、自分の小さなこだわりに執着してる場合じゃない

「これじゃダメだった」という結果を受けて、私は「意味を追い求めて…」というデザイン・コンセプトをすっぱりと切り離しました。
もちろんそういうものが必要になる場面も多いですので、あくまで「この案件に関して」という限定ですが。

王道にカッコいいを追い求めて作り直した結果がこちら。

もちろん、カーボン素材っぽいテクスチャを使ったことに、理由なんてありません。

カッコいいからです。

スポットライトも、地面の照り返しも、ちょっと光ってる文字も、何か意味や比喩を込めたりなんかしてません。

カッコいいからです。

そしてこれを見て、宮川社長からはこんな言葉をいただきました。

やったぁぁあ!!
でもまだリリースしているわけではないので、喜ぶのはまだ早いですね。

個人的には意味や理由を込めて制作するのが好きでしたが、
でもこれはこれで、作っていてとっても楽しいのでした。

 

 

デザイナーには「ただただカッコよく」という注文もOK

今回は完全にお任せしていただいたので、私は自分の判断でコンセプトを決めて、そして軌道修正しました。

しかしもちろん、デザインを任せる側のセールスライターさんは

「こんな感じのイメージでデザインして欲しいんだ」

であるとか、

「ちょっと見た人に意味深なイメージを与えたい」

という注文をしてもかまわないと思います。

 

そして今回のように
「イメージとか特に無いけど、ただひたすらカッコよくして」
という雑な注文でも全然悪くありません。

デザイナーも皆さんと共に、失敗を糧にして軌道修正を繰り返してくれるはずです。

P.S.
この方も、失敗を繰り返しながら着実にスキルアップを図っているようです。→コチラ