2017/03/20

セールスライターがクライアントの修羅場に巻き込まれた話

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2017年3月15日水曜日。

私は、顧問契約をしている美容室を訪問していました。今日の仕事内容は「ミーティングの司会」です。

この美容室には、社長を含めスタッフさんが5名います。まずは50代の社長。自らこの美容室を立ち上げ、17年経営してきました。

あとはスタイリストさん。36歳の「ベテラン勢」が2人。男性のUさんと、女性のSさんです。この二人は年も入社も近いので、比較的同じ意見を持っていて仲がいい。二人とも職人気質です。

次に33歳の「ちょっと若い勢」が2人。どちらも男性で、NさんとKさん。後輩だからか分かりませんが、セールスライターの私が具体的な指示を出すのがこの2人。広告業務をたくさんやってくれています。

年下の方でも33歳といえば、美容室としては年長にあたります。この美容室は、これより若いスタッフがいません。そこまでバンバン雇う状況ではなくなっていったということです。

それから上の世代の美容師さんたちも辞めていき、結果的に年齢の近いこの4人が今も頑張ってくれています。

今日の私の仕事は、ライティングをすることでもビジネスモデルを提案することでもありません。「ミーティングの司会」です。そしてテーマは「値上げ」。

さて、あなたなら、ミーティングをどうやって取り仕切りますか?

なんでセールスライターがミーティングの司会をやるのか

その前の週、私は社長からこう相談されていました。

「最初に桜井さんと会ったときに言っていたよね。うちは単価が低いのが問題だって。だから、そろそろそのあたりを解決しようと思うんだ。

こないだスタッフに『値上げ』を提案しておいた。だから桜井さんには、スタッフの意見を取りまとめて、値上げに必要なことがあればみんなに伝えてほしいんだ」

二つ返事でOKをした私は、さっそくミーティングの開催をお願いしました。それで、今日3月15日にやろうということになっていたのです。

セールスライターがクライアント企業のミーティングを司会するだなんて、変だと思いますか?

ところがどっこい。私は常にこんなことばかりしています。セールスレターだけ書いていれば何とかなるライターなんて、めったにいません。実際は、ビジネスを良い方向へ動かしていくために、人と会うのは避けられないのです。

「単価アップ」という経営課題に対処する現場

「値上げ」をしろ―それは、ダン・ケネディもよく言うことです。ところが、「単純に価格を上げました」だけでは、客数の減少は避けられません。

必ずセットでやらなければならないことがあります。それはなんだと思いますか?

もちろん、この美容室の提供するサービスがレベルアップするなら値上げはカンタンです。ですが、そんなに急にどうにかなる問題でもありません。

そして、単価アップをしないことにはジリ貧であると私は感じていました。安売りでどんなに客数を増やしても、利益が残りませんよね。そのままだと広告費をかけることができなくなる…。この美容室に対して、私はそういう危機感を感じています。

私の答えは、「せめて、今ある価値だけはきちんとお客様へお伝えしよう」ということでした。そしてセールスライターらしく、そのためのパンフレットを作ろうと思ったのです。

今日のミーティングの目的は、「スタイリストさんたちから、このお店の価値ある部分をきちんと聞き出すこと」。つまり、セールスライターとしてのリサーチですね。

そして、彼らに自分自身の提供しているサービスの品質を冷静に振り返ってもらい、奮起を促すみたいなことも目的の1つでした。

趣旨を説明した上で、1人1人順番に「この店のいいところ」を聞いていってハイ、終了!

残念、そうカンタンに行くはずがありません。

セールスライターにとって課題が山積み…

まず第1の問題。サービスを提供している人たち自身が、「ものすごくあいまいにしか価値を認識していない」ということを感じました。

「このお店の特徴はなんですか?」と聞いてみても、通り一ぺんの回答しか得られません。具体的には、

  • お客様の要望にはちゃんと応えている
  • 楽しくトークをしている

くらいなものでした。中には考え込んでしまうスタイリストさんもいました。

でもこれは、「この美容室が全然ダメ」ということではありません。本人たちが認識していないのが問題なのです。

そこで私は、何でもいいからと前置きして、それぞれが持っているこだわり、お客様がこの店のことを何て評価しているのかなどを細かく聞き出していきました。そうすると少しずつ見えてきました!

そこで聞き出せたのが、だいたいこういうこと。

  • 店舗面積が広いので、お客様は開放感を感じることができる
  • 客層(40〜50代女性)にドンピシャなBGMを流している
  • シャンプー時に蒸しタオルを頭にあてるサービスをしている
  • 担当以外のスタッフも、そのお客様のことをきちんと把握しており、横の情報共有を大切にしている
  • スタッフで検討を定期的にしながら、お店で使うシャンプーなどをより良いと思えるものに変えていっている

などなど。私的には、けっこう見えてきました。

とはいえ、もしかしたらあなたはUSPとしてはちょっと押しが弱いと思うかもしれませんね。他のお店でも、ちょっとレベルが高いところならやっていそうな感じがします。

セールスライターなら、あなたも「シュリッツビール」の話を聞いたことがあるはず。簡単に言えば、「製造過程を公開しただけでシェアを伸ばすことができた事例ですよね。

私は、「ちゃんと伝えること」が大切だと思いました。

別に、このお店のスタッフに何か特別なことをしてほしいと思ってはいません。私が現場に入って指導できるわけでもないですから、そんなことをしても意味があるかどうかが分かりません。

それよりは、今すでにこの店が持っている価値をちゃんと伝えることに徹しよう、ということです。仮に他のお店がやっていることでも、「うちもやっています」と言おう。その「伝えること」そのものがUSPになりえる。シュリッツビールの例からは、そんなことも分かります。

ここまで聞き出せたので、とりあえずは良かったー、と私は思いました。

ところが…

第2の問題は、もはやマーケティングどうこうではない

第2の問題。それはセールスライターにとって、コピーを書く以上に難しい問題でした。それがスタッフ間の意見の相違です。

社長に、私は以前から「メニューを松竹梅でつくってください」と伝えていました。既存メニューの値上げばかりでなく、より高品質な薬剤等を使った高利益なメニューが欲しかったのです。

ミーティングの話題が「上位メニューをつくる」というところに差し掛かった時、女性スタッフのSさんがめちゃくちゃキレ気味に社長に食いつきました。

「これまでは経費削減ということで、薬剤をどんどん安いものに変えていきましたよね。しかも、ある日突然私の了解なしに仕入れるものが変わってた。

それに、在庫も抱えないようにしてきました。だから使いたいものがないときがしょっちゅうでした。私はそれも仕方がないと思って、代わりのもので何とかしようと頑張ってきたんです。

それを今さら、また高い薬剤を仕入れておくんですか?なんだか矛盾していませんか?これまで私が苦労してきたのは何だったんですか?

まあ、やりたければ勝手にやってください。でも私は、自分のやり方を変えられません。これまで通りやりますよ。でも、二度と余計な在庫がどうのこうのって、文句を言わないでくださいね」

あれ、こんなにキツイ言い方じゃなかったような…。でも勢いがすごく、表情も真剣だったので、私はこう言われたと記憶しています。

社長はたじたじ、他の人は静観せざるを得ない、そういう修羅場みたいな状況(笑)いや笑い事でもありませんね。

ほとんどのセールスライターが忘れがちなこと

そうなんです、その現場で働く人たちの気持ち。これを考えずして、マーケティング施策は走らないんです。

このお店がこれまで歩んできた歴史。この現場の5人がこれまでとってきたコミュニケーションの積み重ね。よそ者の私がすぐには対処できない、そういう「リアルな問題」が現場にはあるんです。

分かりますか?セールスライターがコピーだけ書いてビジネスに貢献するということの無謀さが…

そして、この現場で働いている人たちの感情を無視して、ただ事例だ理論だっていうものばかりを振りかざして、それで結果が出なければ「だって当事者がやらないから」と、「自分は最善を尽くした」なんてふうに考えちゃう、エセコンサルのアホさ加減が…

私が直面したのは、ヘッドラインの書き直しでも、ストーリーボードの選択でもありません。ただ単純に、目の前にいる人の感情の動きです。

第2の問題について、私は軽く扱うことはできません。私からは、「その気持ちはきちんと理解しました」ということをSさんに伝えました。それ以上、何も言うことはしませんでした。

社長には、「売上とか集客という問題ではありません。もう一度、スタッフ間で話し合ってください」とだけ伝えました。そのためのミーティング(スタッフのみ)が、この記事の公開される3月22日に開催される予定です。

はてさて、どうなることやら…(他人事のように)

この記事を通じてあなたに伝えたいこと

セールスライターとして仕事をするということ。それは、そのビジネスに関わる人たちのリアルな感情を受け止めるということです。スタッフの気持ちを理解し、お客さんの気持ちも理解する。その上で、セールスライターとして言葉を選んでいく…。それが、セールスライターの現場なのだと私は考えています。

でも、つらくはないですよ。大変ですけど、とてもおもしろい。感情に触れることで「僕たちは生きている」ということが、ありありと実感できるのですから…

PS
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コメント

  1. 小林健児 より:

    桜井さん修羅場体験の共有ありがとうございます。

    自分がこの場に居たらかなりアタフタしちゃうと思います。

    現場を知る、お客様に寄り添う事の重要性が臨場感をもってわかりました。

    ライティングやマーケティングに加え、コーチングも必要になるかも知れませんね。

    自分もはやく現場で揉まれて強くなりたいです。

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