【フラグを立てる】という文化のススメ

新たな元号が立ちまして、
「令和」という美しい元号には
日本に良い時代が訪れる予感を抱いております。
どうも、デザイナーの甲斐陽信です。

突然ですが、皆さんは【フラグを立てる】という言葉を知ってますか?

ネットスラングの一種かな?
とお考えの方もおられましょうが、
実はもともとプログラミング業界の用語だったようです。

それが今は各SNS等で多くの人々に膾炙しています。

「予兆を感じさせる」
「なんらかの事象が起きる前触れ」
といった意味を持ちます。

 

例えばこんなくだり…

「ヤバイ、遅刻だ! 急がないと!」
いつものように家を飛び出す古久建夫(ふらぐ たてお)は、学校へ急いだ。
「きゃっ!」「おっと!」
角を曲がろうとした時、急な胸への衝撃に驚いてよろめくと、目の前には制服姿の見慣れない美少女が倒れている。
「あ、悪い。大丈夫か?」
「大丈夫じゃないわよ! どこ見て歩いてるのよこのスカタン!」
一瞬女の子を突き飛ばしたことへの罪悪感が湧いたものの、少女の態度によってその想いもかき消える。
「あ~もうっ! 遅刻しちゃう!」
何かを言い返そうとした時には、もう少女は走って行ってしまっていた。
自分も立ち止まっている場合ではないと気付き、建夫も慌てて登校路を走る。

軽く汗をかきながら学校に着くと、友人が話しかけてきた。
「おはよう建夫。なぁなぁ、今日はなんと転校生が来るらしいぞ。なんでもすごく可愛い子だって話だ」
「へぇ、そうなんだ。まぁ俺はあまり興味ないけどな」
「まぁお前は部活のサッカーにしか興味ねぇもんな」
友人は呆れ顔でため息をついた。

「……そうか、転校生…か」

 

突然始まったライトノベル風の小説に驚かれたかもしれませんが
大丈夫です、ザ・セールスライターです。

こんな冒頭のラノベがあったら、あなたは何かを感じませんか?
何かが芽生えるような、何かが始まりそうな予感がしませんか?
そうです、これが「サッカー少年と転校生美少女の恋愛フラグ」です。

こんな風に、
アニメや漫画・ドラマ・映画・小説・またはゲーム等で、
ストーリーを展開させるために必要な条件を指す言葉を
【フラグ】といいます。

なぜ急にフラグの話をしたのかというと、

この【フラグが立つ】という現象は
なにも空想世界だけの話ではなく、
実は現実世界でもよく起こり得る話であり
またそれが仕事をする上で非常に有用な使い方がある

というお話を、みなさんに届けたかったからなのです。

本当にあった、怖い「フラグ」の話

私は以前、印刷会社の制作部で働いていました。
当時の同期であったA氏とは今でも良い友達関係です。

その頃の私達は、
制作物を作り始める時に「あ~駄目だ、何も思いつかない。自分才能ないわ……」と自らの非才を嘆き、
制作物を作り終える頃には「ちょっとやっぱ自分は天才かもしれん」と調子に乗るような、
発展途上のデザイン中級者でした。

だんだんと仕事を覚え、同期コンビで案件のほぼ全てを任されるようになり始めた頃。
同僚というよりは友人のような間柄のA氏と私は、お互いの作業工程を効率化するあまり、
制作する上で定められた社内ルールをほんの少しだけ逸脱するようになります。

定められた社内ルールとは、
例えばファイル名やデータ名の管理方法。

「20190503_〇〇〇チラシ_RB3_甲斐.pdf」
(制作時期)_(クライアント名)(ツール名)_(サイズ)_(制作者名).拡張子

のような感じでデータに名前をつけるのです。

このルールがあるにも関わらず、私達は
「百年に一度の逸品.pdf」「最高傑作.ai」「デザインという概念を変える金字塔.pdf」
というように、後から自由に変えられるのを良いことに
ルールから外れた(そしてとても恥ずかしい)名前をつけて
お互いにやりとりをしたりしていたのです。

言い訳をさせていただくと、
ルールから外れているとはいえ、その頃は既にたくさんのミスを経験していたので
あくまで【一見ミスに繋がりそうにないように見える部分】を省略したり、
チームの中でだけふざけて楽しんでいたのです。
言い訳になっていませんね、すみません。

そんな楽しい仕事をしていたある日

大きな仕事で深夜にまで及ぶ残業が続き
心身ともに疲れている私達は、二人きりで残業していました。
しかし仕事というものは、頑張ればいつかは終わるものです。

「終わった~…」
「うん、こっちも終わった。データ下ろそうか」
「うん……。これが無事に終わったら美味しいご飯食べに行く。絶対行く」
「いいね、付き合うよ」

という感じで、私達が制作したデータ次の工程に送っていました。

A氏から受け取ったデータを確認もせずに所定のサーバに送る私。
そのデータ名は【tennsai.pdf】

そう、この時私は
【天才】と名のついたデータを、他の部署に渡してしまったのです。

百点満点の見事なフラグ回収

翌日、眠い目をこすりながら会社に行くと
部署が少し慌ただしく、何かに対応している様子でした。

なんと我々が制作した印刷物にミスが見つかり
急いで一部刷り直しが行われることになっていたのです。

ミスがあった箇所のデータ名は……【tennsai.pdf】

ちなみにミスの内容は、データ名とは関係のない印刷物の内容に関するミスです。
しかしなぜよりにもよって、このデータでミスを出してしまったのか……。

果たして私とA氏は二人で
「……をしたまま、下版データ名【tennsai.pdf】を次工程に送信し……」
という恥辱にまみれた始末書を上司に提出する羽目になったのでした。

さらには社内でしばらく
【天才(笑)】という不名誉な二つ名で社内にその名声を轟かせることになったのです。

各所にちりばめられた【失敗フラグ】

この失敗をする前に

  • 「大丈夫だろ」と軽い気持ちでルールを破る
  • 残業続きで疲れた心身
  • 【天才】という調子に乗ったデータ名
  • さらには【天災】とも読めるアルファベット表記
  • 「これが無事に終わったら……」というセリフ

といった、様々な場面で失敗フラグが立ちまくっていることにお気づきでしょうか?

現実に起こった見事な【失敗フラグの回収】に
私達は後日、意気消沈しながら
熱々で美味しいはずなのに
冷たくてほんの少ししょっぱく感じる焼き肉を
無言で食べていたのでした。

とても使える【フラグを立てる】という文化

こうして【フラグを立てる】という経験を得た私達は、
その後
「今回の校閲はもう完璧!」という調子に乗りそうなことを言うと
「甲斐くん、それ【実はミスってるフラグ】ちゃうか?」
と注意し合って入念に確認し、失敗フラグをへし折ったり

「なんで土壇場でこんなイレギュラーが起こるねん!」
と憤るA氏を
「こりゃあ【艱難辛苦を乗り越えて大成功するフラグ】やろ」
と励ましながら、全力で対応して成功に導くなど

【フラグが立つ】という文化を応用しながら
社内での活躍の場を広げていきました。

お分かりでしょうか。

このフラグが立つという考え方は、
上手くいって調子に乗りそうな時には自制を促し、
苦境に立たされても成功を信じて頑張るというマインドを育ててくれている
のです。

また

お客様に喜んでもらえるまでに
どんなイレギュラーがあって
どんなフラグを立てたら
「顧客満足」や「リピート」という終結に向けて物語が進んでいくだろうと

経過を予測しながら、一つひとつ問題を解決していく楽しさ

も味わえます。

令和という新しい時代に
【フラグを立てる】という文化を使って
あなたのお仕事が楽しく力強く前進することを祈っております。

P.S.

こういった新しい生活習慣を取り入れることも
あなたの【人生を変えるフラグ】になるかもしれません。